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旅立ち
少年は、海を眺め、青ざめた。
「間に合ってくれ」
と、祈りながら、またがる駱駝を急がせ、生まれ育った部落を目指していた。
*
が、部落までまもなくの峠に差し掛かったとき、
ゴォーッと、津波が部落を丸ごと飲み込み、一軒も残さず、海に持ち去ってしまうのを目のあたりにしてしまった。
「ああ~っ」
と、叫びあふれる涙を流し、天を仰いで、
「間に合わなかった。天には神様はいないのか。」
と、誰に聞かせるでもなく叫んでしまっていた。
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