テーマ4

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いつもであれば、人間など私に気を向けもしない。しかし、この様な状態の人間にとって、私のような小さき生き物は気晴らしにちょうどいいだろう。少しずつ傷を増やし、嬲り殺しにする。苦しみに喘ぎ、必死に生きようとする存在を玩具の様に壊す。 私の友達がそんな場面に直面し、目の前で嬲り殺しにされてしまったのを見たことがある。彼ら人間にとって、害獣でしかない私たちを殺すことは、娯楽でしかないのだろう。 私は足枷になる食べ物を放り棄てた。それが宙を舞い、血の池に落ちる。パチャっと小さな水音が、やけに大きく響いた気がする。 「何だ? ……ゴミか」 狂人の視線がこちらに向く。逆光の下では彼の表情は窺いしれないが、人間の思考など誰でも同じだ。私たちを駆除するだけ。 ……分かっている。そう、分かっている。でも、この狂気に当てられて動けるものがいるのか? 私には無理だ。 足の一本も、髭の先でさえ動かせない。次第に息苦しくなってきた気もする。殺される。恐い怖いコワイ! 「ゴミはゴミらしく……仲良く死ね」 優しいとすらいえる声で、穏やかに話す目の前にいる人間。一瞬だけ、彼の手にある凶刃が光った気がする。 ……私の記憶は溶けて消えた。
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