テーマ4

2/3
前へ
/20ページ
次へ
薄暗い路地裏をひた走る。今日は珍しく、食材を得ることが出来た。これを食べる前に、猫の餌食になるのは御免だ。アイツらの凶暴さと言ったら、筆舌に尽くしがたい。しかし、人間には遠く及ばないがな……。 私はドブネズミらしく、煌びやかな表通りとは対照的な、どんな魑魅魍魎が潜んでいてもおかしくないと思えるほどの暗闇を、足音を殺し、気配を殺して走り抜ける。 私が闇に沈む路地裏を走っていると、突然に生臭い臭気が鼻を突く。驚いて、歩みを止めた瞬間、私の目に飛び込んできたのは、ゴミか何かのように打ち捨てられた人形だった。 ……違う。こんなものを見たのは、初めての事ではない。これは死んだ人間だ。体からは人間の気配がしないが、紛れもなく人間だ。何よりも、私の足元に広がるこの最低の臭気を放つ液体が証拠だ。 私が少しでも新鮮な空気を吸おうと顔を上げると、何者かが立っていた。煌びやかな表通りからの光のせいで何も判別がつかないが、この人間だと思われる何かから立ち上る気配は……憎悪か? 第六感が警鐘を鳴らす。ここにいてはならない。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加