第1章

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「南沢さん、抜けませんか」 営業部での飲み会の夜だった。 営業の若手も経理の女の子も酔って、なにやら訳もなく盛り上がって、それを見て笑っていた課長たちもそろそろ語りモードに入りそうな頃だった。 このままで行くと、中堅の私が明らかに上司たちの代わりに、若い子達に勢いついでに誘われ、ノリだけの「次、行きましょう」のターゲットになるか、しつこく語るおじ様方の無言の聞き役に回るか、どちらかの嫌な予感がしていた。 ちょうどその時、3ヵ月程前に専務のコネで入社したという噂の営業の貴島さんが、私に声を掛けてきた。 入社したばかりだけど、貴島さんも見た目が30過ぎの中堅だし、やはり嫌な予感がしたのだろう。 深く考えることもなく、その案に乗った。
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