第1章

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ふわふわした気分のままなぜだか、ためらうことなく   「ええ、いいですよ」 そう答えた。 彼はほっとしたような笑顔を見せた。 それは細い黒ふち眼鏡の目尻の皺が、2、3本深くなる愛嬌のある、会社では見せたことのない笑顔だった。 3ヵ月前みんなの前で挨拶した時の無表情でクールな、近寄り難い印象は全くない。   「そんな顔もするんですね」 並んで歩きながら、思わずそう言った。 彼は、ちょっと驚いた風に目を見開いたが、次の瞬間、さっきよりももっと深い皺を作った。
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