はからずしも――人生なんてものは

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知っているとはいえ、――市川さんのことを口にするのは何となく重い 「軽くお茶でもどう?」 そう誘われ、断る理由もない私は、松永さんと駅前のカフェに入った 「市川さんの奥さん、退院したんだっけ」 「――え? あ、はい。先月に――」 「あ、そうなんだ」 「……はい」 知らないのか、――って。 知ってたからなに、だよね。と、私は、運ばれてきたオレンジジュースを口に入れた 「あの日さ」 「……」 あの日? 「市川さん、私といたの」
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