22人が本棚に入れています
本棚に追加
/499ページ
「………………。」
なんて言っていいかわからなかった。
顔が見れない。
やっと前方に南山タワーの建物が見えてきた、あそこからソウルが一望できるはず。
黙って歩きながら
なぜか…
だんだん頭が冷静になっていくのを感じた。
スティーブはとっても優しい人だ。
たぶん社会的にもすごく立派な人なのに、無学な私たちを馬鹿にしない。
同じ人として対等に扱ってくれる。
ヨハンの話からだって彼がどれだけ正しい人間かがわかる。
この人と向き合えたら、愛情を与えてもらえたら、どんなに幸せだろう。
この優しい手にずっと引っ張ってもらえたらどんなにいいだろう。
好きになって、好きになってもらえるかもしれない現実に体が震えた。
でも……恐ろしいと思う。
彼は私の生い立ちを知らない。
うちの両親や生まれ育った町のことを黙ったまま、彼に飛び込んでしまうことはできない。
だって…
スティーブを騙すようなことは、絶対にしちゃいけない。
最初のコメントを投稿しよう!