0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいま」
ドアが開く音と共に、純平の声が聞こえる。足音が廊下をつたってくる。
綾は緊張でバクバクする心臓を手でおさえつつ、深呼吸をした。
大丈夫、大丈夫。そう自分に言い聞かせる。
居間のドアが開く。純平が入ってきたと同時に声を出した。
「あ、豆大福!」
その弾んだ声に綾はほっとして、自然と言えた。
「今朝はごめんね」と。
「ごめんは俺だよ。使い終わったら捨てないとな。子どもじゃないんだからなぁ」
純平は綾に頭を下げながら頭をかいている。
「これ、お詫び」
お皿に載せた豆大福を綾は純平に差し出した。
「俺も買いに行ったんだよ!そしたらさ、店員さんがさ、たった今売り切れちゃったのよって。そのあとに、いつもの店員さん、 大丈夫大丈夫って言うんだよ。にこにこしながらさ。理由聞いてもにやにやしておしえてくれないからさ。不思議に思ってたんだよ」
純平は、豆大福に顔を近づけながら一気にまくしたてた。
「そしたらさ、家に豆大福あるじゃん!しかも六個もだよ!もう、どういうことだよー」
普通にしていてさえ、大きな目なのに興奮している純平の目はますます大きくなっている。
「え!純平も和菓子屋さんいったの?」
純平よりさらに驚いている綾の
目は大きくなっている。
「て、いうかさ……私たち」
二人の声が合わさった。
最初のコメントを投稿しよう!