イチゴのショートケーキ

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中村の目尻は下がっていない。さすがに2日間でシステム入力のケアレスミスは3つ目だ。二度とあることは、三度ある。かもしれないなぁ……。と思っていたら本当にそうなってしまった。 思考は現実化しちゃったなぁ。美和はそう思いながら、中村の怒り声を聞いていた。 中村が話し終わると、 美和はまた頭を深く下げた。 「申し訳ございません!」 美和の大きな声にみんなの視線がまた、集まる。また、やっちゃったんだねぇ、という哀れみの視線。しょっちゅう怒られるな!という、迷惑そうな視線。失敗は誰にだってあるよ、という同情の視線。美和目掛けてやってくる視線は様々だったが、美和の心から逃げ出したいという消えていた。 嫌なことでもその中に飛び込んでしまえば、なんとかなる。乗り切るしかない!という踏ん切りがつく。これも、社会人になって、様々な上手くいかないことに遭遇して学んだことだった。 「もう、西村の『申し訳ございません!』は聞きあきた。だから次は許さないぞ。叱るほうだって労力つかうんだから」 中村は、さっきまでの目尻が上がった表情ではなくなっていた。いつもの表情に戻っていた。怒るときは徹底的に怒るが、普段は穏やかな人なのだ。だからこそ、怒らせて申し訳ないと、中村のいつもの表情を見ながら、美和は反省した。 「イチゴと生クリームが二段挟まっているあの、美和の大好きなショートケーキ、美和の誕生日に買うから。楽しみにしててくれよな」
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