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真人はそう言ってくれた。美和の大好きなケーキ屋さんのダブルショートケーキ。平らに美しく生クリームが塗られた表面には、真っ赤な食べ頃ですよと伝えてくれているようなイチゴがホールケーキの円の周りにのっている。
ケーキの中には、生クリームとイチゴがサンドされている。スポンジ生クリームイチゴ、スポンジ生クリームイチゴ、スポンジと、二段もイチゴと生クリームがサンドされている、贅沢三昧なショートケーキ。
自分の誕生日がこんなに楽しみだったのは、美和にとって小学生の頃以来だ。
大人になってからは、年をひとつとるごとにうんざりしていた。これからどんどん老け込んでいくだけ……。ここ数年の誕生日にはいつも、一人暮らしの部屋の鏡の前で、またひとつ登場したシミを見つめながら美和は溜め息をついていた。
このまま一人だったらどうしよう。
結婚もせずに、ひとりでこのまま、この1DKの狭い部屋で暮らし続けることになるのかな……。
去年まで彼がいなかった美和は、そう考え憂鬱になっていた。
誕生日という日は、祝う日ではなく、憂鬱になる日。
そんな定義になっていた。
そんな定義の誕生日を変えてくれたのは、真人との出会いだった。
出会いはイベント好きな友達主催のバーベキューだった。
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