第1章

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「ゴミくらい捨ててよ」 月曜の朝は猛烈にだるい、猛烈に会社に行きたくない。だが、行かなければならないその状況に、綾は猛烈に憂鬱だった。 眠い目をこすり洗面所に行くと、使いきった歯磨き粉が洗濯機の上に置かれていた。その横に新しい歯磨き粉が置いてある。そこには、寝癖だらけの髪の毛の、純平が間抜け面で歯磨きをしていた。 純平と同棲して、1ヶ月。彼は使い終わったものをとにかく捨てない。 昨日も使いきったマヨネーズのチューブを冷蔵庫に入れたまま、新しいマヨネーズを出していたのだ。「使い終わったら捨てようね」そう、昨日は優しくいってあげたのに。 純平は歯ブラシを口に加えたまま、おちゃらけた表情で綾の顔をのぞいてくる。 「ごめんごめん。後で捨てるからさ」 へらへらと、ぼさぼさの髪の毛をかく純平に綾の怒りは増していった。後でって、どうせ捨てないくせに。昨日言ったばかりなのに。 「もう、いい加減にしてよ!」 綾は昨日のように、優しく注意できなかった。月曜の朝の憂鬱に、綾はイライラを止められなかった。 大好きな純平と同棲できる私は幸せなんだ。だから、嫌なことがあっても、ケンカなんてしちゃいけない。まして、自分から吹っ掛けるようなことしちゃダメだ、そう思っていたのに。
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