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仕事が終わると綾は急いで電車に乗り、住んでいる駅の一つ隣の駅で降りた。
空いていますように……。
まだ、残っていますように……。
そう願いながら、目的地の店へと走る。
店の近くに着くと、まだシャッターは降りていなかった。
「開いててよかったぁ」
思わずこぼれたその言葉に、店の名前が入った白いエプロンをした女性の店員さんは微笑んだ。
この店は綾が大好きな和菓子屋だ。気取りない小さな店には、団子や羊羮、どら焼きなどの甘いものだけではなく、おいなりさんやのり巻きなども売っている。どれを食べても、顔が緩むおいしさだ。それは、綾だけではない。純平も同じで、休みの日に二人で散歩がてら必ずここに寄り、近所の公園で食べたり、家に持ち帰って温かい緑茶といただくこともある。
綾はショーケースに目を落とした。
「よかったぁ、あったぁ」
綾はショーケースをじっと見ながら、安堵の溜め息をついた。
「豆大福、二つください」
綾は真っ白な粉をまとった豆大福を指差した。
「豆大福の大ファンでうれしいわぁ。彼と二人で仲良く食べて!今すぐ包むから」
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