第1章

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仕事が終わると綾は急いで電車に乗り、住んでいる駅の一つ隣の駅で降りた。 空いていますように……。 まだ、残っていますように……。 そう願いながら、目的地の店へと走る。 店の近くに着くと、まだシャッターは降りていなかった。 「開いててよかったぁ」 思わずこぼれたその言葉に、店の名前が入った白いエプロンをした女性の店員さんは微笑んだ。 この店は綾が大好きな和菓子屋だ。気取りない小さな店には、団子や羊羮、どら焼きなどの甘いものだけではなく、おいなりさんやのり巻きなども売っている。どれを食べても、顔が緩むおいしさだ。それは、綾だけではない。純平も同じで、休みの日に二人で散歩がてら必ずここに寄り、近所の公園で食べたり、家に持ち帰って温かい緑茶といただくこともある。 綾はショーケースに目を落とした。 「よかったぁ、あったぁ」 綾はショーケースをじっと見ながら、安堵の溜め息をついた。 「豆大福、二つください」 綾は真っ白な粉をまとった豆大福を指差した。 「豆大福の大ファンでうれしいわぁ。彼と二人で仲良く食べて!今すぐ包むから」
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