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この和菓子屋は、どれをとってもおいしいが、中でも豆大福が綾も純平も大好きだった。ここに二人で来て、真っ先に買うのがこの豆大福。
「豆大福ください!」
純平と同時に言い、店員さんは笑っていた。綾も、純平もあのとき大笑いした。それを店員さんは、覚えていてくれたのだろう。
さっき会社の給湯室で、美紀におしえてもらった緑茶を飲んでいて、綾はひらめいた。あの落ち着く香り高さに、これだ!と思ったのだ。
純平と温かい緑茶を飲みながら食べた、大好きな豆大福を。
二人が大好きなものがあれば、素直に「ごめんなさい」と謝れる。お茶を飲みながらそう確信した綾は、仕事を猛スピードで終わらせた。
「おまけしておいたから。二人で仲良く食べてね。彼にもよろしくね」
店員さんはやさしい笑顔で袋に入った豆大福を綾に渡した。それは、ずっしりと重かった。
おまけの分の重さが、綾に伝えているようだ。自分にとって大切な純平の重みを感じなさい、と。
「ありがとうございます!すんごく嬉しいです。彼と仲良く食べますね」
そう言ったからには、仲良く食べなきゃ。綾は何度もそう思いながら、ひんやりとした風に吹かれて家路を急いだ。
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