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家のドアを開けると、真っ暗だった。まだ、純平は帰っていない。 部屋の中のひんやりとした空気は、今朝の出来事を綾の頭の中によみがえらせた。
綾は大きく左右に首を振った。
「もう、あんなこと二度としない!ちゃんと謝らなきゃ」
綾はダイニングへ行き、暖房のスイッチを入れた。少しずつ出始めた温かい空気に、綾の気持ちも少しずつ、温かくなってきた。
手を洗い、ダイニングテーブルの上で買ってきた和菓子屋の包みを開けた。そこには六個もの、豆大福があった。
「すごい!4つもおまけしてくれるなんて!」
いつもこの豆大福を載せるお皿に豆大福を載せた。真っ白なそれは、綾の気持ちをじょじょに真っ白にしてくれた。
会社で飲んだ高級緑茶ではないけれど、純平と飲む緑茶を急須に入れる。ふわりと漂うその香りは、ふわりと純平のことを思い出させた。
早く会いたい、早く話がしたい。
だったらちゃんと、謝らなきゃ。豆大福を見ながらそう強く思ったその時だった。
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