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「行ってきまーす。」
バタバタと朝支度をして、バターロールを急いで飲み込んで、靴を履く。
「忘れ物、無いのー?」
「あったら、明日持ってくー。」
鬼女の声を背に受けて。
ガラっと、玄関を開け、猛ダッシュ。
家から、学校まで、徒歩二十分。
走れば、なんとか、間に合うだろうか?
家から出て、通りに出ると、自転車一台がせまってきた。
「おう、おはよう!」
片手を上げる男子。
―――あ、貴志だ。
「おはよう。」
ダッシュしながら、自転車の彼に挨拶する。
「つうか、お前の足で間に合うの?」
漕ぐ貴志と、走るわたし。並んで走る。
「間に合わん。乗っけて。」
「仕方無いなぁ。」
キキッとブレーキをかけ、停まる。
「ほら、乗れよ。」
くいっと親指で、後輪を差す。
「おー、ありがとおおお!」
スカートを捲(まく)り上げて、後輪の軸に足をかけ、貴志の肩を掴んで、立ち上がる。
「しゅっぱーつ、しんこうー。」
「ったく、気楽なもんだ。」
自転車が、動き出す。
春風が、心地良い。
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