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―――もしかしたら。
この頃から、貴志を意識し始めてたのかもしれないな。
入学式の日に撮った、祖父の写真を眺めながら、ふと、思う。
なんとなく、だけど。
あの日以来、貴志を目で追うことが多くなった様な気がする。
友情の中で、芽生え始めた恋。
でも、その時のわたしは、幼すぎて、その気持ちがなんなのか、気付かなかった様な気がする。
今、思い返せば、恋の始まりだったんだなって思う。
妄想の中、貴志の顔が浮かんできたことが、恋の始まり。
小学校の時の、足が速いから好き、とか、頭が良いから好き、とかという感情とは、全く別な感情。
切なくて、甘い感情。
子供から、大人になる予兆。
女として目覚め始めた証拠。
―――キス、ねぇ。
幼い自分と、あの時の貴志がキスするのを想像する。
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