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「俺?元気だったよ。」
変わらない声。
さっきのかしこまった声とは違う。
「お前さ、同窓会出るの?」
電話の用件は、これか、と思う。
「ああ、だから、電話寄越したのね。」
「そうだよ。お前が出るなら、俺も出ようかと思ってさ。」
「うーん、出ようかと思ってるよ。恵と連絡取ってから、決めようと思ってたんだ。」
恵とは、大人になってからも、ちょこちょこ会っていたから、携帯番号を知っていた。
「んじゃ、行こうぜ。俺、最近、実家に帰ってなかったから、そのついでに家に泊まろうかと思ってるんだ。」
「え?今、何処に住んでるの?」
貴志と話すのは、あの日以来だった。
「今は、仙台に住んでるよ。」
だから。
お互いの携帯番号なんて知らなかった。
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