手紙

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ガラっと、押し入れを開く。 ―――えーっと、えっと。確か、この箱だった筈。 ガサガサっと、中を荒し、お目当ての箱を取り出す。 「あったー。」 赤い上蓋にHAWKINS(ホーキンス)と書かれた段ボールで出来た箱。 ―――あの頃、ブーツ、流行ったもんな。 そう思いながら、その赤い蓋を開ける。 ぷーんと、黴(かび)の臭いが漂う。長年、開けてなかった証拠だ。 無造作に入っている思い出の品。 現像した時に貰った、クマの絵が描かれている簡易的なアルバムと、『貴志へ』と、丸文字で書かれている白い手紙。 ―――懐かしいなぁ。 しっかし、下手な字。 手紙は、宛名の相手に渡されることなく、封がされている。
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