手紙

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とりあえず。 手紙を開けることなく、アルバムを手に取る。 透明のフィルムを貼っただけの安っぽいもの。 まあ、無料でもらったものだから、仕方無いけど。 一ページ目、開く。 ぶわっと、あの頃の想い出が、広がる。 ―――ああ、これ、入学式だ。 幼い頃のわたしが、母の隣ですましている。 まだ、制服は、がぼがぼだ。 祖父が、家を建て直す前の玄関で撮ってくれた写真。 ―――顔、ぱんぱんだよ。 自分の顔を見て、苦笑する。 母は、今のわたしよりも若い。 ―――流石、遺伝子。同じ顔してるし。 毎朝、鏡で見る顔と同じ顔が、幼いわたしの隣に立っていた。 ―――懐かしいなぁ。 次々とページを捲(めく)る。 その度に、わたしは、その時の自分になる。
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