第1章    疑心暗鬼

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私は母と二人で出掛けたことがほとんどない。 振り返れば、母から誘われて近くに買い物などには 行ったことはあるが、それもほんの数回のことだ。 母は私を誘ってはくれない。 そしてまた、私も母を誘うことはしないのである。 いや、私は断られるのが怖くて、誘えないのである。 気軽に、 「ねぇ、お母さん、ちょっと買い物に行かないっ!?」 と誘えない。 こんな軽い口調で誘えないのだ。 母から「えっ!?」という、驚くような、戸惑うような、 あるいは困ったような、そんな 「どうしようかな」というような反応をされることが怖いのである。 これが私と母との間にある空気だ。
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