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帰路も会話に花が咲き、絶え間無くキャッチボールを交わし住宅街の間を抜けていく。
もしも親が出迎えてしまった場合の対処法をギャグ混じりにしてみた時は、何故か滑った。親が厳しいのかもしれない。ごめんよ。
公園を背中に線路を離れ、遊歩道へとたどり着いてから東へ。
遊歩道に並走する花壇から、鈴虫が求愛の旋律を奏でる中…途中人工水路の暗がりに動く鯉を探しつつ、一キロ程歩いた。遊歩道が大きな通りに差し掛かる。
此処等で、不意に嫌な予感が全身の鳥肌を立てた。
いやまさか。ドラマや小説じゃあるまいし…でも…。過剰な程細い手足にに不自然な軽装、妙な匂い、サンダル、彼女の言う白に統一された部屋。そして向かう先にある、嫌な予感の元凶。
左に曲がり、数十秒。彼女が立ち止まる。
嫌な予感は、大抵当たるのだと。
誰かが言っていた。
「ここだよ、送ってくれてありがとね…?」
彼女が指差す先には。
真っ白な建物。
赤い十字架。
彼女の話は星や空が多かった。
窓の星は窮屈そうだと。
星は、本人にその気が無くとも、特定の条件を満たしてしまうと不吉な物になってしまう。
そして今、なってしまった。
病院と星は。
並べてはいけない物だった。
外の避難用階段を静かに登り三階の入り口へと到着した彼女は、僕に向かって掌を揺らした後…不気味な緑色の灯りが照らす病棟へと消えて行った。
此処から何処を通り、どれだけ時間を掛けて帰ったかなんて。
覚えてないし、興味も無かった。
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