プロローグ

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天井が低かった。 壁が近かった。 ただ単純に、部屋が狭かった。 それだけで充分だった。 …扉を開けて、駆け出すのには。 僕の口から取り残されて、白く色付く吐息の跡は、少しの間を経て空へと昇る。 恐らく外気は寒いのだ。 まだ10月だと言うのに。 上着を忘れた、時計も無い、携帯は…電池が悲鳴をあげてる。ほんの数分で時間の概念から少し逸脱出来るだろう。 寒さに耐えれる間は。 目的があるわけでは無い。 ただ少し走りたかったのだ。 運動不足が露骨に顔を出した為に、1キロにも達せず歩き始める。 落ち着いてみれば、別に走りたくも無かった。 支離滅裂、だが何て事は無い。 此が僕のありのままで、限界で、現在だ。 目的も思想も無く、行き当たりばったりの感情で突っ走り…続けるキャパシティも信念も無く失速して停滞する。 それを理解したから、噛み締めたから。 狭い部屋に居れなくなった。 寂しさ、なのだろう。孤独が心を支配しようとしていた。
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