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きっと彼女の理想は崩れたのだろう。心で描いていた王子様とはいかない筈だ。
…嘘を吐いて良い訳ではない、…だけど…あまりにも情けない。
こんな事を考えてしまう事自体がみっとも無い限りだが、もう少しまともな日常を送るべきだっただろう。
俯き膝に置いた掌を、爪が食い込む程に握り込む。
こんなもの、痛くもない。
そんな様子に気付いたのか、隣から見透かした様な言葉が綴られた。
重厚で、優しい声だ。
「君も思う所があるのかもしれない…、でもね…この子の支えになっていたのも、なっているのも事実だ…」
背中を、ぽんと叩かれた。若い頃は色々ある、私がその位の歳の時は遊び回って居た…陽気な笑い声が響く。
僕の耳に、心に。
ああ、もうこの人には気付かれているのだろう。
僕が彼女の思う様な人間では無かったと言う事に。
けれど、僕の思いとは反対に彼女の父親は言葉を止める事はなかった。
彼女は、数年前からまともに寝れて居なかったのだと言う。
この目を閉じたら、二度と開かないかもしれない。
意識が限界を迎えプツンと途切れる迄…小さな身体を膝を抱えて全力で縮込ませ、震え乍布団に潜り込む。
そんな日々を送っていた。
それが手紙を受け取った日から、少しずつ改善していたとの事だ。
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