プロローグ

4/4
前へ
/31ページ
次へ
唐突に溢れる涙と共に、妻の浮気を見たかの如く冷や汗が止まらない。鼓動は毎秒加速して行く。手足の震えはアル中宜しく震度8を記録する。 このままじゃ、こうなる。 その未来は、生涯の選択肢の一つに必ずリストアップされている、それは間違い無い事で。今のままの自分では、そこに行き着く事は必至なのだろう。 そこまで考えついた時には、ドアノブを握っていた。 一人で天井を見上げるのに耐えられなかった僕は、とたんに空を見たくなった、走りたくなった、それは若さの体現でもあるなんて、考えもしない。 いずれ歳をとり、あの時は若かった何て言う日が来るのだろうか。 そんな話を聞いてくれる人が、居るのだろうか。 とにかく今は、星も見えない都会の片隅で。空を見上げるんだ。 何時の間にか線路沿いの小さな公園へ辿り着いていた。ベンチに腰掛けるも、当たる臀部が冷えてくる。 長居は出来そうもない。上着くらいは持って出るべきだったのだろう。 だけどもう少し。 何万か、何億か、誰かと一緒に空が見たい。 その中の誰かが、いつか僕の隣で空を見上げる事を信じて。 白い吐息が空へと昇る。 やっぱり今日は寒い。 まだ10月だと言うのに。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加