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唐突に溢れる涙と共に、妻の浮気を見たかの如く冷や汗が止まらない。鼓動は毎秒加速して行く。手足の震えはアル中宜しく震度8を記録する。
このままじゃ、こうなる。
その未来は、生涯の選択肢の一つに必ずリストアップされている、それは間違い無い事で。今のままの自分では、そこに行き着く事は必至なのだろう。
そこまで考えついた時には、ドアノブを握っていた。
一人で天井を見上げるのに耐えられなかった僕は、とたんに空を見たくなった、走りたくなった、それは若さの体現でもあるなんて、考えもしない。
いずれ歳をとり、あの時は若かった何て言う日が来るのだろうか。
そんな話を聞いてくれる人が、居るのだろうか。
とにかく今は、星も見えない都会の片隅で。空を見上げるんだ。
何時の間にか線路沿いの小さな公園へ辿り着いていた。ベンチに腰掛けるも、当たる臀部が冷えてくる。
長居は出来そうもない。上着くらいは持って出るべきだったのだろう。
だけどもう少し。
何万か、何億か、誰かと一緒に空が見たい。
その中の誰かが、いつか僕の隣で空を見上げる事を信じて。
白い吐息が空へと昇る。
やっぱり今日は寒い。
まだ10月だと言うのに。
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