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「……………あの…」
さて、居たたまれ無いので帰…。
呼ばれた気がする。公園の奥の方から。ブランコからだ。
声の感じから推測するに、女性。いや、女の子と言うべきだろうか?
僕よりも幾つか年下に感じる。だとしたら未成年うんたらかんたらとかで、補導されかねん年齢になってしまうが、恐らくは十代だろう。
「…あの…」
今回は確実だ、確実に呼ばれている。
幽霊や妖怪の類いであれば、無視を決め込む所なのだが。産まれてこのかた心霊経験等皆無な僕にとって、この時可能性の1つにも考えて居なかった。
声の主を確かめる為、すっかり冷えきった臀部をベンチから浮かせ…公園の奥へと身体を向ける。
ブランコに座る、人型の影。
月に掛かって居た雲が、少しずつ風に流され、徐々に月明かりが影を照らす。
爪先…サンダル…か…?
足…素足に…スカート…いや。
胴体…白いワンピースに紺のケープ… 華奢…遠目であっても細身な事が見てとれる。
そして顔、頭、月明かりがその全てを映し出す………。
僕なんかに付き合ってくれた歴代の彼女には申し訳無いが。
…比較にも成らなかった。
僕の生活圏であろうが、美人が並ぶ液晶の向こう側でさえ。
誰も足元に及ばない。
まさしくその子は。「……天使」
月光に照らされた少女に、僕は心を奪われた。
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