月光に浮かぶ天使

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女神と言う場面ではあるのだが、女神にしては幼さが残る。 さしずめティーンエンジェルと言うやつだ。 余程食い入る様に僕は見詰めて居たのだろう、彼女は目が合った途端に頬を染めて視線を右下へ反らし、数度桃色の頬を指先で掻いた後に微笑みを返して来た。それも、見た事も無い天使の笑みを。 一言で言うなれば、無垢と言うやつだろうか。純真無垢と言う言葉はこの子の笑みの為に作られたのかもしれない、真面目にそう考えてしまう程美しく可愛らしいものだ。 余計な言葉を綴れば綴る程、初雪の様に儚く純白な其を汚してしまう様な気さえする。 人は歳を取る程表情を作るのが下手になる。僕なんて最後に笑ったのは何時なのかも思い出せない。同じ雪に例えるなら、泥混じりのアイスバーンだ。 綺麗な頃等生暖かい青春時代に溶けて水になり、絶望、不安の絶対零度で社会や腐敗した人間関係の汚れを纏めて絡めて凍り付く。 そしてその凍て付いた心は、誰かを転ばせて傷付ける。 彼女は、そんな僕と同じ次元に存在してないのだろう。 この子はとてつもなく、表情が純粋なのだ、赤子が浮かべる笑みの様に。 その上彼女の微笑みは、極々自然にナチュラルに、女の子の魅力を備えた最高の奇跡とも言える。 視線が合ってから此処まで5秒も経過していないが、僕が用を尋ねるよりも、彼女の動作が半歩先行した。 誰もが吊られて口許を緩ませる屈託の無い笑顔を僕に向け、小首を傾げた彼女は小さな唇を開いた。 さしずめ音色はハープの如く。 「…こんばんは?」 やはりこの子は天使なのだろう。
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