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***
その夜、他の心霊のお仕事を早々と片付け、三神さんからのヘルプの念をキャッチできるように、リビングにてリラックスしながら待っていた。
「付き合ってくださいと、いきなり言われてもねぇ……」
霊以外、他の女の影が見当たらない変わったイケメン。あれだけ人が良さそうなら、彼女の一人くらいてもいいのにって思う。
「過去の彼女が自分以外の女が出来ないように、呪いをかけたという形跡もないし、現在彼女がいないのは私と同じく、仕事が忙しいからなのかなぁ?」
どこかズレてる感じのする人だけど、お試しで付き合ってみるのも面白いかもしれない。
テーブルに頬杖ついて笑ってしまった時に、頭の中に大きな声が響いた。
『衣笠先生っ、助けて下さい! 好きなんです!!』
三神さんの心の声に思わず赤面してしまう。まったく――
「助けてっていう念以外、飛ばさないでほしいよ。集中力が欠けちゃうじゃないのさ」
両頬をぱしぱし叩いて気合を入れ直し、ぎゅっと数珠を握りしめると、三神さんのお宅に自分の意識を飛ばした。
邪念を飛ばしたせいで間違いなく彼は今、大変な目に遭っているに違いない。
苦笑いしながらマンションに到着、玄関の扉をすり抜けて寝室まで一直線に進むと、三神さんの首を絞める女の幽霊が恨めしそうな顔してこっちを見た。
(お前は誰だ? 何をしに来た?)
三神さんに跨りながら私の姿を睨みあげ、低い声で唸るように告げた。
「悪いけど、その首を絞めてる手を離してくれないかな。彼、苦しそうにしてるじゃない。可哀想でしょ」
「うっ……衣笠、せんせ……」
三神さんの体から、半透明の魂が抜け出そうとしていた。苦しそうな表情を浮かべて私を見ている。
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