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(――このままはマズい。早く体に返してあげないと)
毎夜襲われていると言っていたから、かなり生気を吸い取られていたのかもしれないな。見た目すっごく元気そうにしていたから、見誤ってしまった。
「さっさと彼からお退きなさい! あっちに行ってっ」
数珠をかけてる左手で女の幽霊をなぎ払う様に、三神さんの体から追い払ってやった。
「三神さん、自分の体に戻って。そのままでいたら駄目よ」
「衣笠先生……来てくれたんですね。よかった」
嬉しそうな顔をして、いきなり抱きついてくる。
ちょっ、今は魂の姿なんだってっば! しかも体から出てきちゃダメなのに、この人は――
「はいはい、落ち着いてくださいね、嬉しいのは充分に分かりましたから。今は寝てください。明日きちんとお返事します」
なだめるように背中を叩いてやり、何とか魂を押し戻す。
「はい。楽しみに待ってますね、衣笠先生」
「いい夢を……」
笑みを浮かべ寝入ってくれた顔を確認後、改めて女の幽霊と対峙した。
「動きたくても動けないでしょ。悪さをした罰で金縛りかけたからね」
(お前……彼のなんなの?)
「今はただの依頼人よ。アナタが毎夜の如く三神さんを襲うものだから、助けを求められたの。それにしてもどうしてこの部屋で、自殺なんてことをしたの?」
半裸で横たわってる姿は、どう見たって色情狂にしか見えない。だけど本来の姿は違ってるはずなんだ――
「お前になんか分からないよ。醜く生まれたせいで好きな人からも相手にされず、一生懸命お金を貯めて整形して綺麗になっても、冷たくあしらわれる気持ちなんて」
「美人は3日で飽きるって言われたね、確か。可愛げのカケラもないとも言われたな」
腕を組んで見下ろしながら言ってやると、ぽかんとした表情で私の話を聞く。
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