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「隣の芝生は青く見えるっていうことよ。アナタだけじゃなくみんな、大なり小なり苦労して、頑張って生きてるんだからね。生きていたらもしかしたら、ステキな出会いだってあったかもしれないじゃない」
(そんな、こと……)
迷える姿に右手をかざして、本当の彼女の姿を映し出してあげた。
「――水玉のワンピース。アナタのお気に入りでしょ?」
ボロボロだった姿を、彼女が一番欲しがっているイメージした姿に変えてあげる。きっと整形前の素の自分の姿だろうな。
(これ……彼が似合うねっていってくれたものなの。嬉しい……)
「分かるよ、私から見ても素敵だなって思ったもの」
膝をついて顔を突き合わせると、困った表情を浮かべた。
(あの私……自殺したから地獄に行かなきゃならないの?)
彼女の言葉に、ふるふると首を横に振った。
「本当はこの世で生きながら、いろんな苦難や困難を乗り越えて修行し終えて、最期を迎えなきゃならないんだけどアナタの場合、それを途中で放棄したことになるんだよね」
痩せ細った腕を手に取り、両手で握りしめてあげた。
「残した修行をあの世でするなら、道を作ってあげられるけど」
乾いた声で告げてしまったため何かを察したのか、長い睫を伏せて考え込ませてしまった。
(その修行っていうのは、やっぱり辛いことなんでしょ?)
「……そうね。だけどアナタはこの世で生きていて、辛いことばかりじゃなかったんじゃない? 楽しいことだってあったでしょ。思い出してみて」
握りしめた手から思念を読み取り、奥底に仕舞われている楽しい思い出を引きずり出す。
――感じてちょうだい。生きていて良かったって思ったことを――
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