幻影~あなたの背中~

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2013年4月8日。 庭に咲いた桜が花弁を散らし始めた頃、小学四年生になった娘の亜美と家を駆け回り、私は出発の準備をしていた。 「ティッシュとハンカチは持った?」 私の問い掛けに、亜美は「うん!」と言いながら大きく頷いた。 「よし、じゃあパパに朝の挨拶してから出ようか!」 そう言って私は亜美の手を繋ぎ、リビングから仏壇のある和室に移動して座布団の上に座る。 私が手を合わせて目を閉じるのと同じタイミングで、亜美もモミジの葉のように小さい手を合わせる。 「行ってきます」 「ます!」 「なんでいつもますしか言わないのよ」 私はそう言って笑いながら、亜美の頭を撫でた。 遺影の泰彦さんも、優しい瞳で見つめている。 「えへへ」 亜美は満面の笑みで立ち上がり、玄関に走っていく。 私もやれやれと言った顔で立ち上がり、ダイニングチェアに掛けてあった上着を羽織った。
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