256人が本棚に入れています
本棚に追加
2013年4月8日。
庭に咲いた桜が花弁を散らし始めた頃、小学四年生になった娘の亜美と家を駆け回り、私は出発の準備をしていた。
「ティッシュとハンカチは持った?」
私の問い掛けに、亜美は「うん!」と言いながら大きく頷いた。
「よし、じゃあパパに朝の挨拶してから出ようか!」
そう言って私は亜美の手を繋ぎ、リビングから仏壇のある和室に移動して座布団の上に座る。
私が手を合わせて目を閉じるのと同じタイミングで、亜美もモミジの葉のように小さい手を合わせる。
「行ってきます」
「ます!」
「なんでいつもますしか言わないのよ」
私はそう言って笑いながら、亜美の頭を撫でた。
遺影の泰彦さんも、優しい瞳で見つめている。
「えへへ」
亜美は満面の笑みで立ち上がり、玄関に走っていく。
私もやれやれと言った顔で立ち上がり、ダイニングチェアに掛けてあった上着を羽織った。
最初のコメントを投稿しよう!