第1章

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―――3023年。 地球温暖化は人類の努力を踏み潰すかのように進行し、やがてピークに達した。海抜の低い島国たちは水没し、日本も、僅かにだが国土の少しを失った。 もちろん、死者はでなかったわけではない。多大な被害が出た。 砂漠化は進行し、世界を舐め回すかのように広がって行った。アジアの半分近くが砂漠と化し、人が死んでいった。 幸い、新興国と発展途上国がお互いに助け合い、地球温暖化を停止させたことは、大きなことと言えよう。世界中から、ほっとした安心の声が響いた。 百億人にまでは満たなかったが、それに近い数字だった世界の人口は、今では五十億人にまで減少している。いちばん砂漠化が進んでいたアフリカ大陸は、死の大陸と呼ばれるようになった。 地球温暖化停止から数年後。世界中が助け合い、復興を目指していた時。 3027年。 人類は、摩訶不思議な現象に遭遇する。 穏やかで、とてつもない広さのある太平洋。 そんな太平洋に、突如、どうやって出現したかは不明だが(なぜなら、津浪が起きなかった)、本初子午線のやや東よりに、巨大な建造物が唐突に出現した。 何処かの国が、内密に建築していたわけでもない。何もない時を過ごし、次の日には太平洋に元からあったかのように、それはその場に鎮座していたのだ。 “灰色の塔”。最初は訳が分からず、人類は突如現れたそれを、そう呼んだ。しかしいつからだったか、灰色の塔は【無垢の塔】と呼ばれるようになった。 【無垢の塔】が出現したと同時に、世界にはさらに出現したものがあった。 それは、二人の神である。 翼を持った神だった。 しかし二人の神は、二つで一つの翼を、それぞれ一つしか持っていなかった。 ローゼと名乗った白い神は、右翼を、 ベリアと名乗った黒い神は、左翼を、持っていなかったのである。 それから人間たちは、今まで信仰していた宗教を捨て、新たに二つの宗教を作った。 左翼の神、ローゼを崇める【純白教】 右翼の神、ベリアを崇める【漆黒教】 それらの二つの宗教は、太平洋にある【無垢の塔】を境に東が【純白教】、西が【漆黒教】と、世界が二つに分断された――――。
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