1章 出逢いの春

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学校が終わると、私は軽く肩を鳴らしながら校門を出た。 新入生代表の挨拶だ。 成績に関しては誰にも負けないように常に努力をしてきた。 人付き合いがない分、時間をもてあましている。 年季の入った携帯のメモ帳に、日記や小説を書くこと。 音楽を聞くこと。 勉強すること。 本を読むこと。 それが私の趣味だ。 時計を見ると、まだ11時を回ったばかりだった。 同じクラスの奴らは、部活見学に向かうらしい。 入学する前から帰宅部を決めていたので、私は暇になったのだ。 大抵こう言う日は家に帰り、趣味に没頭すると相場が決まっている。 けれど、丁度自作の小説は詰まっていた。 本を読むにも手持ちはどれも読んでしまったし、図書館も今日はあいていない。 勉強もなんだか気が向かない。 音楽も先程まで聞いていたせいか、軽く耳が痛い。 「あっ…」 帰り道。 これからの予定を考えていて。 ふと電光掲示板に目を走らせる。 4月10日 「そっか…今日だったか。」 嫌なことを思い出した。 いや。 元々忘れてなどいない。 忘れようとしただけだ。 今は。 私しか覚えてあげられないから。 忘れてはいけないと。 潜在的に覚えていたのかもしれない。 「…命日」
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