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それに、こんなに清々しい朝は久しぶりだ。気持ちよく類を送り出せた。
こんな風に朝を迎えることが、こんなにも気持ちのいいものだったってことを、俺は忘れていたのかもしれない。
当たり前のようにある日常に、当たり前のようにある気持ち。
だけどそれは常に変化して、馴れることはないのかもしれない。
だからこそ、笑ったり、泣いたり、怒ったり、哀しんだりできるんだろう。
だけどそこにあるお互いを想い合う気持ち。
それだけは見失わないように、これからも過ごしていきたい。
――俺も、いつも想ってるよ、類のこと。
再び潜り込んだベッドの中で微睡みながら、愛しい人を想う。
そしてその時、左手の違和感に気づいて布団から腕を出す。
「え……うそ……」
薬指に嵌められた指輪は、カーテンから射し込む陽光に照らされキラリと輝いた。
「ちょっ!類ー!」
身体の怠さも忘れてベッドから飛び起きた俺は、今まさに玄関を出ようとしている類の背中に飛び付いた。
*END*
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