類の想い

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「その元モデルってどこの事務所にいたとか分かってるの?」 「あぁ、確か泉って事務所だったな」 泉!?泉ってあの噂のある事務所……。 「どうした?」 「えっ?あ、いや……実はそこの事務所、売春の斡旋をしてるって噂があって」 驚いた俺に気付いた類はすかさず聞いてきた。 「それも知っている。その事務所に誰か仲がいいやつがいるのか?」 「ううん、いないよ」 夏目くんは顔見知りってだけだから、別に名前を出す事もないだろうと言わなかった。 「で、誰と飲んで来たって?」 急に話を戻され、何故か慌てる俺。 だって類の顔……怖い。 「えっと……な、何かショーとか企画してる人」 「前からの知り合いか?」 片方の眉をくっと上げて聞いてくる類は、恋人というより尋問をする刑事のようだ。 「今日初めて会った人。俺を使いたいって言われて事務所を通してくれって言ったんだけど、少し話したいって言われて……だけど俺は断ったよ!」 何をそんなに必死になってるんだと自分に思うが、類の射抜くような視線からは逃れられそうもなかった。
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