牧歌~収穫の歓びと訪れる死の季節に

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太陽の沈み行く野辺に 干し草の山が落とす影の森 路地を駆ける娘の肩には 毛織りのケープが重たく揺れる 夕餉の煙が天に昇れば 瞬く星々も光を落とす 永遠などとは御伽の話 隣の爺様 大往生でさようなら 黄金の季節に実を結びましょう 冷たい冬にも耐える熱を灯し 枯れる事もなく落ちた青い葉 そうは成らず済みますように 風に吹かれて暦は進み 時紡ぐ糸車は廻り続ける 憂えるよりも土を耕せ 来年もまた歓びを分かてるよう 薪割りの歌が朗々と響けば 悪戯な狐も森へと帰る 短い時を大いに楽しみ 明日からはまた鍬を持つ日々 高嶺の花よと澄ました雌鳥 金の卵を産んでくれまいか 叶わぬ夢なら眠りの果てで 身の丈知れば知恵も廻り出す 羊飼いの鳴らす草笛に 素足で踊る麗しの女達 いずれは苔生す墓石の下敷き せめて孫子の顔は見たいもの 籠の中には溢れそうな林檎 イヴの罪など野暮の抗弁 陽気に騒げば羊も跳ねる 友よ 恋人よ 今日に祝杯を!
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