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あの当時依然として友達ゼロだった僕は、冬休みというそのあまりにも長い時間を持て余していた。
そんなわけで街へと暇つぶしに行ったのだ。
まだバイトはしていなかったので、好きな物を買う余裕もなくウィンドウショッピングするにとどめていた。
街を歩けば人だかり、道行く人は幸せそうだ。
やるせない思いで通りを歩く。そんな時、たまたまショウウィンドウに飾られた女物の洋服に目が留まる。
女装趣味があるわけではないが、僕は何となくこれを眺めていた。
はたから見たらさぞ滑稽であっただろう。
だって、男一人で女用の服をガン見しているのだから。
しばらくそうしていると、ふと僕の背後に誰かが立ち止る。
ガラス越しに見れば、それが女性であることが分かった。
第一印象は、やたらと胸の大きな女性だな、といった感じだ。
まあ、健全な男子高校生なら顔よりもまず胸に目が行ってしまうのも当然だろう。
みんなだってそうだろ? そうに違いない。
どんな顔をしているか見てみたい、僕は不思議とそう思った。
別に胸が大きかったからとか、そんな邪な感情ではなくて単純な好奇心からだったと思う。
いや、今考えるとこれが運命、ていうか呪縛だったのかもしれない。
僕の人生を悪い意味で大きく変えるカギを握っていたのだ、この女性は。
思い立ったら即行動。僕はゆっくりと振り返る。
その女性は五、六年前はさぞ美しかったんだろうと思わせるような顔立ちだった。
僕の視線に気づいた女性は、パチクリと瞬きをして僕を見た。
このまま目があってフォーリンラブ、とはいかない。
さすがにそのまま見つめ合うわけにはいかないので、僕はそっと目をそらした。
そうして僕は、再び歩みを進めてあてもなく街をほっつき歩くつもりだった。
だが、そうはいかなかった――
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