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なにやらこの女は名案でも思いついたのだろうか。
意地の悪いような笑みを浮かべて、僕の耳元でこう囁いたのだ。
「ひっじょぉぉぉぉに残念だけど仕方がないわねぇ? できればあなたの自主性を尊重してあげたいのだけれど、あなたがワガママ言うならねぇ?」
額から流れる一筋の冷や汗が、僕の頬をつたってポトリと床に落ちる。
嫌な予感がする。ていうか、嫌な予感しかしない。
「あ、あんたになにができるって言うんだ?」
これから起こるであろう最悪な事態を想定しながらも、どうにか虚勢を張って大声で言った。
ああ、今でもはっきりとこの女が言ったことは覚えているとも。
女の顔から笑みは消える。代わりに、借金取りが金を返せと言わんばかりの冷酷な表情を浮かべ、女とは思えないほどドスのきいた低い声で僕に言った。
「無理やりあなたにメイド服着せて写真を撮って、それでその写真を学校にばらまいてやろうか」
「悪魔だぁぁぁぁぁぁ!?」
こんな恐ろしいことを表情一つ変えずに言ってのけた。
こいつはもう悪魔以外の何者でもない。
「あらあら、いきなり大きな声を上げないでくれる? 迷惑よ」
「あんたのほうが僕にとっちゃよっぽど迷惑だよ!」
「グフフフフ……。観念なさい?」
そこで僕の頭は真っ白になっていった。
その後のことはよく覚えていない。いや、もしかしたら覚えていないのではなく本能的に僕の記憶から抹消しようとしているのかもしれない。
そしてまた、覚えていなくて幸いなのかもしれない。
こうして来栖渚は晴れてぴゅあぴゅあラブリーはぁとの従業員となったのであった――
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