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小鳥のさえずる音で僕は目を覚ました。
「もう朝か……よっと」
眠い目を擦り、ぐっと両手を上げ、背筋を伸ばす。
現在妹は私立ではなく公立に通っている。あの時妹は、なんて答えたんだっけな。
もう随分と昔のことだ、なかなか思い出せない。
だけどきっと、僕だけじゃなく妹もこんなことは忘れているのだろう。
手短に制服へと着替えを済ませ、階段を下りてリビングへと向かう。
来栖家の朝は早い。僕が起きる頃にはみんな、とっくに出かけてしまっている。
親父もお袋も共働きだから、お袋が朝ごはんやお弁当を作っていかないことにも別段腹も立たないし気にもしない。
もう僕も高校二年生だ。自分のことぐらい自分でやるべきだろう。
食パンを咥えながらパタパタと足音をたて、再び二階の自室へと戻りカバンに教科書を詰め込んでいく。
「これでよし」
朝ごはんも食ったし、教科書もいれた。
あとは―――
「あいつ、今日は学校行ったのかな」
僕の部屋のちょうど真上にある妹の部屋を見上げる。
窓に写った僕の顔を見れば、それはひどいものだった。
悲しそうとか辛そうとか、そう簡単に言い表せる表情ではない。
これはもっと深い感情だろう。
かぶりを振って僕はそんな自分を否定した。
自分の価値観を押しつけるな、そう言い聞かせて玄関へと歩みを進めていく。
妹が学校に行かないのには、きっと何かしらの理由がある。
それも知らないで、やれ学校に行けだの、部屋から出てこいなどと言えるわけがない。
「行ってきます」
朝からギラギラと鬱陶しいほどの輝きを放つ太陽を一瞥して、僕は気の進まない登校を開始するのであった。
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