第1章

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けど、僕の場合はモチベーションアップどころかむしろダウンしている。 何で僕なんかに投票してんだよ、お前らの目は節穴かってな。 僕の人気が上がれば上がるほど、それだけ琴乃さんに縛られる。 逆に僕の人気が壊滅的であれば、琴乃さんは愛想をつかし、晴れて僕は普通の生活に戻れるということだ。 まあ人気がどうとか、とやかく言っても仕方がないとしてしてだな。 こうして琴乃さんに渚ちゃんと言われるのは気分が悪い。 僕はあからさまに不愉快そうな顔をして琴乃さんに言う。 「すいません……その渚ちゃんってのやめてくれませんかね?」 そんな僕のささやかなお願いも、琴乃さんは聞き入れようとはしない。 琴乃さんは代わりにふん、と鼻で笑ってみせた。 「いいじゃな~い? どうせあんたは女みたいなもんだし」 なんて失礼なやつだ、このババアは。 「僕はれっきとした男です! お・と・こ! だからちゃん付けはやめて下さい。ていうかやめろ、今すぐに」 「口の利き方がなってないわねぇ……? いいのよぉ? 今すぐみんなにばらしても?」 「僕が悪かったです。申し訳ございません、美人なお姉さま」 メイド喫茶で培ったノウハウを生かし、精一杯のお世辞をかます。 「よろしい」 全然だめじゃん僕。 いや、まだだ。諦めるには早い。いつか反旗を翻して、この店もろとも潰してやるさ、絶対に。 「それじゃ、さっさと着替えて準備しなさい。もうそろ開店するわよ」 なにがもうそろだよ。 ババアが若者言葉なんか使うと、余計にババ臭く見えるっての。 「今なんか失礼なこと考えてない?」 こいつ!? ただものじゃねぇ……。
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