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「悪かったな……その……ちゃんとお前に歩み寄ろうとしなくて……」
きっと妹は僕の詫びなんか期待していない。待っているのは、この言葉だろう。
「けどな、甘えんじゃねえ……何もかも人のせいにすれば済むとでも思ってんのか? そうやって自分の殻に閉じこもってれば……自分は傷つかなくて済むって思ってんのか……? 違うだろ!? いい加減目をさませ! お前が僕や親父と口を利かない理由なんざ分かんねーよ! けどな、そうやって引きこもって何か変わったか……? 周りは? 自分は? 変わったことはあるか? 何も変わりやしねえだろ? 自分が変わんなきゃ何も変わらない。そうだろ……?」
扉に向かって何か物を投げつけている。扉は閉まっているのだから、僕にそれは届くことなどない。
そんなこと分かってはいるのだろうが、きっと感情が昂ぶって物に八つ当たりするしかないのだろう。
「……うるさい」
小さな声がひっそりと聞こえる。
「……あたしのこと……何も知らない癖に……」
「ああ」
「お兄ちゃんなんかと……話したくなんかない……」
「また逃げるのか?」
「逃げてない……あたしはいつだって、逃げてなんかない……」
「じゃあ何で僕や親父と話さない? 何で毎日学校に行かない? 答えてみろ」
「それは……」
言葉に詰まっている。別に僕は妹をイジメてやろうなんて思ってない。ただ本心が聞きたいだけだ。
「お前、男性恐怖症ってのは嘘なんじゃないか?」
やはりこれがよく分からない。どうしてもそうは見えないのだ。
「嘘じゃない……もん……」
「メイド喫茶に来た時、店中男だらけだったけどあれはどう説明するんだ?」
「うぐ……」
すぐに言葉が出てこないのは嘘ついてるからなんだろう。顔を見たわけじゃないが、今妹がどんな表情を浮かべているかすぐに想像がつく。
昔からの癖で困ったときはいつも口を右手で覆う。きっと今もそうしてることだろう。
「あの友達とは仲いいのか?」
このまま追及しても埒が明かないので、いったん話を変えることにした。
「うん……」
「名前は?」
僕とこのまま会話を続けるべきか戸惑ったのだろう、少しの間をあけて、僕の問いに答える。
「……銀ちゃん……」
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