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「僕のハート、あなたのお口にと~~~どけ! はい、あ~ん」
学校から帰ったら即出勤。着たくもないメイド服を着て、やりたくもないことをやらされる。
逃げ出したら社会的死亡、やり遂げても精神的死亡が待ち受けているというまさしく板挟みな状況。
さあ、君たちならどちらの死を選ぶ。あ、ちなみに僕は、僕っ子として売り出してる。
流石にあたし、などと女っぽく話すのは抵抗感あるからな。
席は順調に埋まって行って、今日もぴゅあラブは大忙しだ。
ここでまたまた、カランカランと客の来店を知らせるベルが鳴り響き、僕たちメイドは一斉に出迎える。
どんなに忙しくとも、客が来れば僕らはすぐに駆けつける。
「「お帰りなさいませ、ご主人様!」」
深々とお辞儀をしてチラッと顔を見ると、そこにはどこかの学校の制服を着た、まだ中学生くらいの女の子が立っていた。
垢抜けてはいないけれど、素朴な感じが男性ウケしそうだ。それにしても、この子は客?だろうか。
今までにも女性客はいたけれど、ここまで若い人は見たことない。
「あれ、凛子ちゃんがいなくなってる!?」
凛子? その単語が嫌に頭に張りついていく。まさかな。
そんなことより、この少女は来店したのになかなか店に入ろうとしない。
さっきから、店の入り口でチラチラと後ろを気にしてばかりいる。
「ご主人様? どうかなさいましたか?」
見かねた僕は、とりあえず店に入れという意味をこめて少女にそれとなく促す。
「はうっ!? 超絶美少女!? やっべえ! まじやっべえ!」
な、なんだこいつは? 新手の嫌がらせ?
恐らく僕はもの凄く当惑していたのだろう。そんな僕を見て我に返ったのか、少女はまた普通のテンションに戻って話し出す。
「あ、ごめんなさい! 友達と一緒に来てたんですけど、どっかいっちゃいました! すぐ探して戻ってきます!」
「は、はい……い、行ってらっしゃいませ、ご主人様」
わけの分からない客だったな。その場で硬直していた他のメイドに指示を出し、僕らは再び接客へと向かう。
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