0人が本棚に入れています
本棚に追加
”光ヶ丘高校入学式”
大きく掲げられた看板
入学式とはいえ中学と違って保護者はとても少ない。
今年の桜はとても遅咲きだった。
今頃桜が散って桜の絨毯になるか春風とともに私たちを迎え入れるかそんなことも考えては見たがこの8分咲きの現実を見ては気分も下がるばかりだ。
また3年間の”友達ごっこ”が始まる。
僕の前で何かがまばゆく輝いた。
モノクロだった私の世界がまた色づきだす…
そんな予感がした
その光源は黒髪の少女から発せられたものだった。
髪の色と光の色は近い関係があることが多い。
その子の発した光の色は…
「ブロンズ」
振り向く少女髪が太陽で明るく色づいた。
ゆっくりと顔をゆがめるその少女は僕に向かって前のめりになっていく。
そっとその真紅の唇を開く。
「バレた?」
その少女の顔立ちは
日本人にしては堀が深く、黒髪も光を当てると少し茶色っぽく見える。
瞳は…
ん?
「コンタクト…」
少女は目を見開いて鞄を持っていない手で片目を隠す。
黒い瞳の周りに少し青っぽい円がそこにあった。
その少女に腕をつかまれ桜の裏の死角に入った。
ほのかに香る桜と彼女の髪が僕を奮い立たせる。
彼女の髪が頬に触れた。
「いわ・・・ないで」
薄紅色の唇がゆっくりと言葉を発した。
「どうして?」
やっとのことで口を開いて彼女に問う。
彼女はうつむいていた。
最初のコメントを投稿しよう!