第1章

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流架と香凛はほんの少しではあったが打ち解けることができた。 「香凛さま、必要な衣類をお部屋にご用意いたしました。気がつきませんで申し訳ございませんでした」 食事が終わったタイミングで戻って来た仁の、例によって慇懃に伝える言葉に嫌な予感は、した… そもそもお部屋に、ってなぜあなたがわたしの部屋に入れるのよ!? …と、言う素朴な疑問はこの際不問にした方が良さそうだ、と香凛はあきらめている。 スペアキーは持っているのよね…きっと… 部屋は流架が用意したものだから当然と言えば当然だし、流架や仁がそのキーを間違った事には使わない、と言う確信は持てた。 しかし… 部屋に入った香凛は頭を抱えてしまった。 ベッドの上に準備されていたのは夥しい数の室内用のカジュアルウェアと…まるでお姫様のようなナイトウェア… そのどちらも高価な事で有名なフランスのブランドの物だった。 わたしはいつも着ているUNIQLOのでいいんだけどな… 香凛はため息をついた。 だいたい、まだショップなんて開店してない時間じゃない… どういうツテでこれらを入手したのか確かめるのさえ恐ろしかった。 流架の家柄のすごさを見せ付けられるだけの様な気がする。 とりあえず、スーツからその中の一つに着替える。 上質の素材を使って作られた高価なその部屋着は着心地が良かった。 てきぱきとベッドの上からそれらをクロゼットに収納するといつもあまり濃くはない、ナチュラルメークをした。 うん、OK! これでいつでも仕事に行ける! 香凛は臨戦態勢完了、と今日一日の仕事に意欲を燃やした。 あれ、でも今日の予定って… 聞いていない… 今度は自分に頭を抱えた。 またやっちまった… さっき朝食の時に流架に聞いておけば良かった…! 自分の迂闊さに呆れながら再度、流架の部屋を訪ねる事にする。 エレベーターの鏡に写る香凛はさっきと違い仕事モード全開だった。 また、ドアをノックする前に仁が扉を開けた。 超能力者!? 香凛は少しゾッとする。 なんだか自分の行動のすべてを見られている様な…そんな気がした。 「香凛さま、何か?」 テーブルの上はすっかり片付けられ流架の珈琲だけがのっている。 「あの…」 わたし、今日の予定を伺うのを忘れていて… 申し訳なさそうに香凛は上目遣いで流架を見た。
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