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「流架…?」
キングサイズの広いベッドからすとん、と降りると香凛は流架を探した。
主のいない豪華なスイートは居心地悪いことこの上ない。
寝室を出たところの朝食を摂った部屋のベランダに、流架はいた。
燦々とした陽を浴びている流架のプラチナブロンドがきらきら輝いている。
陽の光の中の流架はヴァンパイアらしからぬ情景だった。
しかし、その姿は深い森の中の、深い深い碧の湖と一体化してまるで絵画のように見え、香凛の口から思わずため息がもれる。
綺麗…
目の前に存在しているのが信じられないような、そんな美しさだった。
香凛の気配に気付いた流架がわらいかけた。
その微笑みに引き寄せられ香凛はベランダに出た。
え…?
ベランダに一歩出るとそこは見慣れた都内の、スカイツリーの見える風景だった。
「あれ?」
きょとん、とする香凛を可笑しそうに流架がわらう。
「魔力は部屋の中だけですよ」
部屋から見た外だけが森と湖です。
ベランダに出てしまうとそこは外ですからね、私の魔力は消えてしまいます。
「そうじゃないと見渡す限り、に魔力を使わないといけなくなりますからね」
さすがにそれは出来ません。
流架がわらった。
笑っている流架は年相応な少し幼い表情も見えなくはない。
しかし、やはり、どう見ても香凛よりも、大夢よりも年上に見えた。
「流架は本当に20歳…なの?」
やはり、黙っていられない質の香凛は聞いてしまう。
「はい、先月20歳になったばかりですよ」
一応、飛び級で大学は卒業しています。
「…?」
くすり、と流架がわらった。
「何を勉強していたの…?」
「医学です」
医者の資格はありませんけど、ね。
「医者になる試験には落ちました」
と、流架がわらったが香凛はそれが嘘だとすぐにわかる。
もともとお医者さんになる気はなかったんでしょ?
「そうですね…その気はなかったですね」
テーブルセットの置かれた広いベランダで柵に両腕をかけ、銀色の髪を風になびかせながら流架は頷く。
「私たちの一族と、人間との違いを知りたかったので…」
医学を選びました。
「違い…わかった?」
流架は首を横に振る。
「なにも…医学的には変わりませんでした」
流架は前に自分の生まれに誇りを持っている、って言ってたけど…
「はい、そうですよ」
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