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わたしたちから見たら流架は…バケモノだわ…
「そうですね…」
流架が穏やかにほほえむ。
致し方ない事だと思いますよ。
人間に比べて私たちの一族は砂漠の砂粒一粒よりも少ない…
多数派の人間から見たら私達少数派は異形のモノ、で当たり前です。
「しかも…ヴァンパイアは昔から怪物扱いですから、ね」
それを責める気はありません。
確かに、私達は人間とは違いますから…
見ようによっては私達は人を喰らうバケモノと思われて当然です。
「流架…」
だから…私達は自分の素性を本当に愛する人にしか明かしません。
だから…愛する人の血しか吸えないのです。
誰の血でもお構い無く吸っていては秘密は守れません。
「流架は…よく知りもしないわたしに…」
ヴァンパイアだって…明かすのは平気だったの…?
「はい」
あなたは私が愛した人ですから。
「…!」
だから…わたしには婚約者がいるし…
いきなり愛している、私はヴァンパイアだ、なんて言われても!
それにはなにも答えず流架はやさしい微笑みを浮かべた。
「愛しています」
本当は、自分の揺らぎそうな心を、香凛自身がもてあましていた。
大夢を愛している。
でも…流架を愛しかけていることに香凛自身が気が付いている。
たった二日で…?!
いや、違う!
わたしのこの流架への気持ちは身体に与えられる快感に流されているだけ…!!
でも…
そう思うとそれで自分が身体への快楽だけで揺らぐ女になってしまう…
しかし、
まだ香凛は流架に抱かれた訳ではなかった。
「そんなに愛してくれているなら…」
今まで何回もチャンスがあったのに…
なぜ、わたしを抱かなかったの…?
流架は何も言わず優しくわらった。
「本当に愛しているなら…」
わたしに婚約者がいようとなんだろうとあそこまで行ったら抱いてしまうんじゃ?
「なのに、結局抱かなかった、って事は…」
そんなに愛していないのよ…
身体が欲しいほどには…
「わたしのことを、そんなには、愛していないのよ…」
「抱いて欲しいのですか?」
相変わらず流架は優しく笑っている。
「そうじゃないわ…!」
あわてて香凛は否定した。
「いつか、ね…」
流架は自分の半分位に見える身長の香凛の頭をポンポンと撫でた。
訳もわからず香凛は赤くなる。
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