第1章

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今日の天気とおなじように、流架と香凛の間にも流架が望む穏やかでつつがない時間が流れていた。 しかし、その穏やかでつつがない時間を破る事件が起きた。 それは入浴もすませ、そろそろ眠ろうか、と言う時間だった。 「香凛さま」 かすかにドアをノックする音に、用意されたお姫様のようなナイトウェアでベッドの上でくつろいでいた香凛はあわててガウンを羽織りドアをあけた。 「仁さん…」 声の主はわかっていてドアをあけたが、もう人の部屋をたずねるような時間ではなかった。 「失礼します」 他のお部屋の方のご迷惑になりますので、と仁は香凛の部屋にすべりこんだ。 「先程こちらのフロントに反町大夢さまとおっしゃる方が見えました」 「大夢が?」 なんで? 香凛は訳がわからない。 「なんでも香凛さまと連絡がつかなくなった、と仰っていたそうです」 あっ…!! 思い当たる事のあった香凛は青くなる。 「こちらのフロントでは宿泊客の個人情報なので香凛さまのお部屋も、流架さまのお部屋も教えずお帰りいただいたそうです」 どうしよう…! 「どうかなさいましたか?」 「あの…」 香凛はあわててテーブルの上のスマホを取りに行った。 「夕べお風呂で落としてしまって…」 と、仁に見せる。 「故障してしまったので電話が繋がらなかったから…だと…」 思います… 消え入りそうに香凛は言った。 「ごめんなさい!!」 何度も頭を下げる香凛に仁は流架のようにわらった。 「そういう事でしたか」 わかりました、と香凛の携帯を受け取った。 「昼間のうちに言ってくださればよろしかったのに」 まさか…スマホを水没させた事をすっかり忘れていた、と正直には言えない… 香凛は少し赤くなった。 「お任せください」 そう言うとあとは何も言わず仁は香凛のスマホを持って出ていった。 それから… 小一時間位経って日付が変わる頃、また微かにドアをノックする音がした。 香凛は仁である事を疑わずドアを開ける。 「お待たせいたしました」 と、真新しい最新機種のパステルピンクのスマホを手渡した。 「番号はそのままです。電話帳も移してあります」 メールは香凛さまに失礼かと思い引き継ぎませんでした。 …って! 今、夜中だよ!? 携帯ショップ開いてないよ??!!
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