第六話  心の行方

16/19
前へ
/19ページ
次へ
この手紙には、あの傲慢で、冷酷な社長の姿はない…。 社長の弱さを初めて感じた気がした…。 桜田は思わず手紙を握り締めた。 悲しみと悔しさが、一気にこみ上げて来た。 「優一さん、その手紙を読んではいませんが、内容の検討はつきます。 父は、あなたに会社を頼むと書いていたのではありませんか。 父は生前、口癖の様に言っていました。 ヒカリ商事を任せられるのは、優一だけだ。 優一なら、自分の思いをきっと分かってくれると…。 父の優一さんに対する信頼は、とても強かったはずですから」 マリエの言葉に、桜田は社長を裏切ってしまったという罪悪感でいっぱいだった。 社長の信頼を裏切り、社長から逃げてしまった自分を、桜田は責めていた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加