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マリエは桜田の手を掴んだ。
「優一…、父が亡くなりました…」
覚悟はしていたものの、マリエのその言葉に、桜田は目を伏せた。
「優一さんも知っての通り、父はとても傲慢で、酷い人だった…。
でも、私にはとても優しい父でした。
どんなに仕事が忙しくても、私の事を心配してくれました。
一年ほど前にガンだと分かった時には、もう手遅れでした。
三ヶ月と宣告を受けた父でしたが、顔色一つ変えずに、その命の期限を受け入れていました。
私は父に治療に専念する様に言いましたが、父はこう言ったんです。
仕事が一番の治療だと…。
最後まで仕事人間でしたが、仕事を愛していたからこそ、長く生きる事が出来たのかも知れません」
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