憧れのカレと…

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********** 「…いい?南さんは一ノ瀬くんと過去のデータ化されてない計算書を全てチェックして頂戴。そうね、98年辺りからデータ添付が必須になったから大変でもそこから過去20年を当たってくれる? あ、南さん、古い書類は文字が潰れて読めない場合があるから一ノ瀬くんに解読して貰ってね。彼、そういうの得意なのよ」 そう言って彼女がニッコリ微笑みかけると一ノ瀬さんはとっさに頬を赤らめて俯いた。 「怨恨絡みでデータの改ざんとかホント大迷惑、いい年したオッサンが真面目な女子社員をたぶらかすからこんなことになるのよ!」 課長である彼女は歯に衣着せないその主張から男性社員はもちろん後輩女子からも憧れの的で、 「うちの会社は完全にとばっちりで無関係だと思うけれど、一応全ての過去案件を確認した上で問題がないことを報告出来ればいいの。とにかく皆でやれるところまで頑張りましょう。 特に一ノ瀬くんと南さんは時間勝負だから今すぐにお願いね!」 ポンと一ノ瀬さんの肩を叩いて足早に過ぎ去る彼女はいわゆるOL制服姿の私とは違って、長身で着こなすパンツスーツが見惚れてしまうほどに似合ってる。 …いいの、だって彼女はみんなの憧れだし。 彼女を見つめる一ノ瀬さんの熱い眼差しに胸の奥がキュッと音を立てる。 一ノ瀬さんが彼女のことを好きだなんて最初から分かってた事だもん。
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