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学校からの帰路でわたし、リア・トライフルは、途中寄ったアイスクリーム屋さんで買ったカップアイス入りのビニール袋を自転車カゴに、もう一つ買ったチューブのシャーベットをくわえて自転車を押していた。
「あっつ…」
刺すような太陽の光。夏は好きだけど、この暑さはどうにかならないかな。汗止まんないし、日中じっくりと日焼けしてたコイツは素足に厳しい。
そろそろ家に着く頃、不意に携帯が鳴った。兄さんからだ。
「はーい?」
『リア、俺だ』
「兄さん。今日帰ってくるんだよね?」
わたしの兄、ディル・トライフルは国を跨がる商人。世界で認められた人間にしか扱えない商品を売っている。自慢になるけど、もちろん兄さんもその一人だ。
こうして月に一、二回家に帰っては、旅した国のお土産や学費と生活費を置いてくれる。わたしのたった一人の家族。
近況を話しながら、またあとでね。と電話を切る直前だった。兄さんが慌てたように話かける。
『ああ、そうだ。風呂を沸かしておいてくれ』
…こんな暑い日に?
「水風呂じゃなくて?」
『ぬるめのでいい。実はな──』
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